地鎮祭(じちんさい)大和言葉では(とこしずめのまつり)をする理由は2つあります。
1つ目は その土地の神を祝い敷地を清め、神様へ報告と許可をお願いする。
2つ目は 工事の安全と、建物が何事もなく永くその場所に建ち続けることが出来るよう祈願する。
大和言葉でも書くように、地鎮祭はとても歴史のある建築儀礼です。おおよそ1000年ほど前から存在し、江戸時代に家相とともに広がったものです。また、神様への報告としていますが、仏教やキリスト教などの方式の地鎮祭もかなり歴史があるようです。私自身、調べて知ったことをざっくりとまとめたので、もし興味があれば調べてみるのも良いかもしれません。
さて、私のように建築に関わる方のほとんどが地鎮祭のことを知り経験していると思いますが、地鎮祭なんて聞いたことない!どうしていいか分からない!という方はたくさんおられると思っています。マンションを購入するなどした場合は耳にする機会もないでしょうし、そういった方が今後さらに増えていくことは不思議なことではありませんから。
まず、地鎮祭に対する1つの捉え方をお話ししようと思います。
簡単に表現するなら・・・初詣には行かれますか?七五三はされましたか?厄払いはされましたか?・・では地鎮祭はされましたか?
初詣は1年に1回ですが、七五三や厄払いは1人の人生で何度も経験するものではありません。特に宗教とは関係なく経験された方は多いと思います。また、不運なことが起こってしまい、厄払いしておけばよかったなぁと言う方にあったこともあるのではないでしょうか。受験の前にお守りを持ち・・と言ったことも同じです。要するに、やっておいた方が気分よく、後で後悔することも少なくなる。だったらやっておいた方がよいこと。かなり大雑把な表現ですが、地鎮祭もその1つだと考えてみるのはどうでしょう。
では、実際に地鎮祭をすることを考えてみます。
実際に家を建てることになったとき、建設を始める前に施主、施工業者、設計者が参加し地鎮祭を行い、多くの場合ご近所へ工事着工の挨拶に伺います。地鎮祭をしない場合には、建て始める前に面と向かって業者の方と顔を合わせる機会がほぼありません。つまり、地鎮祭をすることで建て始める前から業者との顔合わせや、ご近所さんとのつながりのきっかけが同時に出来るわけです。何十年も住む家ですから、それに関わる様々な人とのつながりを持つことは是非しておきたいですよね。こうして現実的に地鎮祭を見てみると、宗教的なこととは関係ないところで1つのコミュニケーションツールと捉えることもできます。
地域柄なのか、地鎮祭をしたくないと希望されるお客様とは出会ったことがありません。
家作りはたくさんの人が関わります。たくさんの考え方と関わるということだと常々思っています。上に書いたことは本来の地鎮祭の意味とは異なるかもしれませんが、地鎮祭の捉え方は変化してもおかしくないとも思います。1000年もたっていますから。
地鎮祭の風習が根強く残る地域のいち設計者として、捉え方の参考になればと思います。